VODによる英語のCALL授業と教材のデジタル・データベース


以下の論文は第6回情報処理教育方法研究発表会」

(1998年7月4日,アルカディア市ヶ谷(東京,私学会館)にて開催 )

における研究発表の予稿集よりの転載


成蹊大学

田辺春美 正岡和恵 虻川 雅一

180-8633 東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1 TEL: 0422-37-3659 tanabe@fh.seikei.ac.jp

1.はじめに

[授業科目名] 英語I・Comrephensive

[学部・学科名・単位数] 文学部英米文学科 通年2単位

[授業形態] 1年生全員必修,週1回,CALL教室,34-5名×6クラス

[授業で使用した情報教育機器の種類] LLシステム Sony LLC-900,QL-30B1BM3 48台,VOD サーバー VS-70 3台,ファイルサーバー QL-70F, QL-50 各1台,エンコーダーシステム QX-3500 1台,教材オーサリングPC QL-50 1台

[利用環境] CALL

[システムの規模] Sony Study Wave,Windows95

[情報教育機器の利用頻度]  CALL教室 週一回,個人視聴室 VODのクライエントPC 常時

 

2.本論

 最近の技術革新により,CAI教材にはますます高度で自己完結的な機能が備わるようになってきた.このような教材を授業内で使おうとすると,教員は教室では単なるペースメーカーの役割を果たすにとどまる.我々は,あくまで授業の中でコンピュータをもっと有機的に利用したいと考えている.そこで,CAI教材の得意とする個別化と大学の授業という枠組みにより生じる統一性の両者を有効にバランスを取る方策,また,開発した教材の再利用方法を提案したい.

2.1 成蹊大学のCALL教室のシステム

 成蹊大学では、日本の大学としては初めて、ビデオ・オン・デマンド(VOD)対応のマルチメディア視聴覚システムを導入し、平成8年4月にその運用を開始した。その教室群の一つにサーバーマシーン,クライエントPC,LLがネットワークで結ばれているCALL教室がある.本教室は,ネットワーク環境で複数のクライエントがサーバー上にある様々なファイル,特にデジタル動画ファイルを同時利用できるVODシステムを備えている.このVODサーバーは,CALL教室だけでなくマルチメディア棟の他の教室からもアクセスできるので,CALL教室で使ったものと同じ映像ファイルを自習室で見ることができる.CALL教室はLLシステムとの統合型であるため,学生が各自教材の音声をカセットテープに録音したり,教師用コンソールから学生の発音をチェックしたりといったような従来のLLシステムによる教育だけでなく,1人1台のパソコンも搭載しているため,ワードプロセッシングやインターネットの利用方法などの情報処理教育も行える多彩な機能を兼ね備えた教室となっている.また,CALL教室は,CAI教室で個々のパソコンで聞く音声よりもよりも格段によい音質が得られるのも優れた点である.これらの機能はこれからの語学教育の新たな局面を展開している.

 

2.2 VODによる英語のCALL授業

 英米文学科では、平成9年4月から,このVOD対応のCALL室において、1年生全員を対象とする 必修の英語の授業を行っている。昨年度は新システムを利用して初めて統一教材による授業を行った年度であったので、まず語学教育におけるVODシステムの有効性と問題点について、従来の アナログビデオと比べながら検討した。 授業内容 は,各週異なるトピッ クのABCニュースを聴解力強化用の教材に自主編集したものを用いた.前期はアナログビデオを学生のモニターで一斉に見られるように数回送出し,後期は,あらかじめビデオをデジタル映像ファイルにし,それを授業時にサーバーから各クライエントPCに送り学生に自由にアクセスさせた。VOD教材の学習画面は,左上に動画、右上にアナログエリア(OHCによる正解の資料提示やビデオなど),下半分にワープロ機能を用いて英作文などをさせるためのフレームの三分割になっている.この学習画面は,Study Waveというオーサリングツールで作成した各種ファイルの閲覧用フレームで,クライエントPCには,このフレームとこれに関連付けされているファイルを送ることになる.

 平成10年度からは、統一教材はすべて前期からVODを使用し,各週のニュースの動画だけでなく,ニュースの背景,語彙についてpreviewing activities,内容理解のための英問英答postviewing questionsを取り込んでさらに教材にマルチメディア化を進めた(図1).これは,各週の学習画面の1ページ目を静止画として背景と語彙の解説をつけ、2ページ目からは三分割のうちワープロ画面に内容についての質問を提示し、別の画面に現れる映像を自由に視聴しな がら答えをキーボードでうちこませるようにしたものである。

 

 

(図1)

 VOD教材は、これまでのビデオと比較して(1)頭出しが簡単、(2)各自が見たいところを何度でも呼び出すことができる,(インデックスをつけると瞬時に呼び出し可),(3)個人の理解度やニーズに応じてそれぞれ異なる動画を視聴することができる、(4)というメリットがある.昨年度CALL教室で学んだ学生に実施したアンケート調査の結果 では、学生208名のうち約8割が、主として、「自分で自由に何度でも見たいところが 見られる」という理由でVOD教材のほうを好み、英語の勉強にやる気が でてきたと答えている。教育効果については、5割弱の学生は聴解力がVODにより「ついた」と答えている.

 

2.3 教材のデジタル・データベース

 テキストにしろ,映像にしろ,静止画にしろ,音声にしろ,一旦デジタル化してコンピュータに入れた素材を,一度だけ授業で用いて消去してしまうのはもったいない.折角用意した教材のリソースをもっと有効に再活用したい.デジタル化した素材は,様々に加工し保存するのにきわめて適したメディアであることを鑑みて,これからは有効利用しやすい方法を開発していく必要がある.そこで,昨年度授業で使った映像ファイルを利用して,さらにマルチメディア的な自習用補助教材を開発した.ここでは,平成10年度版よりも語彙の詳しい解説を付け,語彙の発音を音声ファイルで用意し,ニュースを見る前に学習できるようにした.また,授業時には印刷のプリントで配っているスクリプトもテキストファイルにして,映像ファイルと同期して画面上に流れるようにしてある.これらのファイルは,授業を補う課題用,自習用としてサーバーに入れてあるので,自習室から授業時間外にいつでも好きなときに学習することができる.また,閲覧ソフト(MMLS Viewer)と一緒にCD-ROMで保存したので,HDが一杯になっても教材を将来にわたって蓄積することができるのみならず,マルチメディア棟以外でも同じ環境で学習できる.

 現在の利用例は,主に授業外の課題である.統一教材であるため,6クラスの授業は各週でどのトピックの教材をやるかはあらかじめタイムテーブルが決められていて,各授業担当者はそれに従って授業を行っている.従って,祝日・学校行事などで休みになるとそのクラスはその週のトピックはとばすことになっていた.しかし,授業補助システムにより,学生に個人視聴室で休みになる週の課題を自習させることができる.また,過去の教材データベースからの教材は,適宜担当者の判断で追加課題として授業に加えて課外に自習させている.このような自習用補助教材の蓄積は,課題の設定を容易にし,学生の絶対的な学習量を多くすることになり,学習効果を上げるものと思われる.

 

2.4 まとめ

 授業の中で利用するCALL教材は,必ずしもその中であらゆる学習活動を完結させる必要はなく,授業の枠は教員がコンロールしながらVODサーバー・ファイルサーバーに素材を用意して学生に個別学習をさせることにより,学生の動機付けを高め学習効果を上げることができる.VODを使ったCALL教材を授業用に作成する毎に,それを授業の補助教材や自習用教材としてよりふさわしい形になるように改良しながら,教材データベースを構築してく方法は,他の教科にも充分応用できるし,大学間でデジタル・リソースを共有する際にも貴重な礎となる.


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